中国人実習生の遺族が損害賠償請求
7月にご紹介した茨城県で中国人実習生が過労死した事件は、昨年11月に国による労災認定が下りていますが、遺族は、さらに、第1次受入れ団体と実際に働いていた会社に対して、損害賠償を求める訴えを水戸地裁に起こしました。
訴額は、5,750万円です。
訴えによると、死亡した中国人男性は、2005年12月に来日してから月100時間を超える残業が常態化し、休日もほとんど与えられず、その結果、来日から2年半後の2008年6月、就寝中に急死したとされています。
労働基準法では、休日は毎週1回以上(例外として4週に4回以上)与えること、割増賃金については、1日8時間、1種40時間を超える場合は2割5分(休日労働の場合は3割5部)以上で支払うことが定められています。
また、①月100時間をこえる残業があり、②疲労の蓄積が見られる場合で、③本人の申し出がある場合には、医師による面接指導を受けさせなければなりません。
しかし、この事件の場合、遺族は、残業のうち、20時間を超える部分については時給400円しか支給しておらず、休日も2日しかなかった月もあったと訴えています。
これが事実とすれば、明らかな労働基準法違反になります。
医師の面接指導については、3つの要件がそろった場合に会社に義務が発生するものですが、3つの要件をクリアすることは、労基法や安全衛生法に違反しないためのもので、仮に、①と②の要件があるのに③の要件がないからといって面接指導を行わなかった場合、民事的なリスクを逃れることはできないと考えています。
第1次受入れ団体である協同組合も、この事実を知っていながら監督・指導を怠っていれば、やはり、今回のような訴訟リスクを負うことになります。
今回のケースのみではなく、会社には従業員の健康に管理する義務がありますので、これを怠り、重大な健康障害や過労死などを引き起こした場合のリスクを考えると、従業員の健康や安全には十分な対策が必要です。
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